そして、透真がふと師匠に視線を向けた。

「お前はお利口だな。掃除してる間ずっと待ってて

くれてありがとうな。藤永から秘密で餌も高いヤツ

あげるからな。」

師匠の頭を撫でて笑った透真に熱い友情を感じた。

だから、師匠は今まで隠していた必殺技を使った。

それは、今まで誰にも見せたことはなかった。

「お前やないで!師匠って呼びや。」

師匠はずっと自分が人の言葉を話せることを隠していた。

それは怖かったからだ。

鳥である自分が人間の言葉を喋ったら気味悪がられると

思って隠していた。

それは永久に隠すつもりでいたのである。

「えっ!?今、幻聴が・・最近疲れてるのかな?」

透真がパッチリと目を瞬きする。

「幻聴ちゃう。しっかり、現実見とき。」

「えっ、お前が喋って・・」

「せやから、お前やない。師匠ってお呼びッ!!」

ポーズを取ると透真が珍しそうに見た。

「そうか、師匠はすごいな。ちゃんと人の言葉

理解してるんだろ?」

「そやで、賢いやろ。そこら辺の鳥と一緒に

するんやないで。」

「そりゃ、しないけど。何で今まで喋らなかったんだ?

藤永は師匠が喋ること知ってるのか?」

「知らん。わいが気を許したヤツにしか喋らんからや。

せやから、お前は数少ない一人やで。嬉しく思ってや!!」

「そっか、じゃあ、友達だな。」

師匠はその言葉が何よりも嬉しかった。

今まで、自分は違うと思っていた。

誰かに存在をやっと認められたのだ。

「しゃあない、友達にしたってもええで。」

「おうっ、じゃあ師匠友達の証の握手!!」

「なっ、そない恥ずかしことせん。」

「そんなことないぞ。仲良くなるきっかけになるんだからな。」

「お前、変わってんでな。」

「師匠、お前じゃない!!俺は透真っていう素晴らしい

名前があるんだからな。」

「しゃあない、透真って呼んだる。」

「そう来ないとな。」

それが、師匠と透真の馴れ初めである。