馬鹿みたいって、今なら思う。
だけど当時の私には、本当に耐えられなかったの。

一人きりの部屋も。
つるまなきゃならない学校も。
上辺ばかりの友人も。
自分の事ばかりの親も。

ぜんぶ、ぜんぶ耐えられなかった。

品行方正を守ってたのに、どうして駄目なの?
先生の言うとおりにしたらみんなに「イイ子ぶってる」って言われて。
成績だって頑張って勉強したから良くなったのに「がり勉」だからって。
そんなの、言う前にやればいいじゃん。

「大学は国大でしょ」「将来は医者になるんでしょ」
お父さん、お母さん、私一度もそんな事言った事ないよ?
それどころか、どれだけ顔を会わせてないんだろうね。
ねえ、私の言葉、ちゃんと聞いてよ。

どこにも居場所がなくて。
誰も信じられなくて。

そんな私の心を落ち着かせてくれたのは、自分の血と夜の街だった。

手首を切ったら痕が残っちゃうから、例えば唇の皮を剥く。
荒れちゃうと切れちゃうから、そう言って誤魔化せるでしょ?
あとはささくれを剥いたり、お腹を引っかいたり。

とにかく見つからないようにバレないように。
誰にも私が止められないように。

そうやって毎日を過ごしていた、そんなある日。

いつもとは違う道を歩いていた私は、小さな古本屋さんを見つけたんだ。