2人が完全に見えなくなった後、私は勢いよく上体を起こす。



すっかり辺りは暗くなっていた。



「夜がきたわね…」



小さく息を吐いた後、私はすくっと立ち上がる。



んーー。と背伸びをした後、私は懐から分厚い本を取り出す。


「さて、今日のお仕事は…っと」


取り出した本をパラパラと捲り、文字がずらっと並んだページに目を通す。


「今日は、3人かぁ」


そこには、人の名前が書いてある。


これは死神リストと言って、私が魂を狩る対象者の名前が載っている。

天界で判定されたその日の死者が自動的に、この本に印刷される。

いつの間にか紙に黒文字が浮き出てくる感じかな。



私はここに名前の載った人の所へ出向き、魂を狩る。

基本的にここに名前の載った人にしか、私の鎌は効果がない。
リストに載ってない人を、たとえ鎌で斬ったとしても、死ぬことはない。

このことを何度説明しても、あの魔法使いは聞く耳を持たない。いや、聞いてない。という方が正しいかもしれない…。


「はぁー」


アイツのこと思い出し、思わずため息が出てしまう。


夜が私の仕事の舞台だ。





「さ、お仕事はじめましょうか」



鎌を呼び出し、私は目的地へと向かう。



黒いマントに、月の光を浴びて銀色に光る鎌。


私は、死神。人の魂を奪う者。


今日も仕事を難なく遂行できるだろう。


どうか安らかに。そう魂に願いながら。