あの出来事から数日が経った。
私は再び仕事を再開し、忙しい日々を送っていた。今まで代わりにやってくれていた分、私も頑張らなくちゃ。
今は夕刻。もう少しで夜の帳がおりる。
丘の上で夕日を眺めながら私はボーッとしていた。
「死神さーーーん」
ふとどこからか声が聞こえてきた。
…なんだか嫌な予感がする。
「死神さん!」
ハッとして、真上を見上げると、そこにはホウキに乗った魔法使いがいた。
「魔法使い!」
なんだかこの感じが久しぶりな気がした。
「見付けましたよ!さあ!今日こそは、僕を殺してくださぁぁい!」
「お、こ、と、わ、り、よ!!」
いつもの調子の魔法使いに、私もいつもの調子で返す。
私の前で降り立った魔法使いは、急に真剣な顔になり、更に私に近付いてくる。
「ところで死神さん?僕はいつまで『死神さん』と呼んでいればいいのですか?」
「は?」
「魔王様には、名前を教えて、僕に教えてくれないってことはないですよね?」
私に顔を近付けて、ニコッと笑う魔法使い。
「~~~~っ」
あまりの顔の近さにドキッとする。
「さ、先にアナタが教えなさいよ!」
顔を背けながら言う。
「僕ですか?僕の名前は…………」