「まったく…!何してるんですか、キング!」

つかつかとこちらに歩み寄って来る魔法使い。



「えー。何って、死神ちゃんを口説いてる最中だよー」

えっへへー。なんて、魔法使いに向かって笑うキング。


「あ、あの、き、キングって……」



私の言葉に、魔法使いが答える。

「この方が、この城の主、つまり王様です」


………。
一瞬思考が停止する。魔法使いの言葉を頭の中で反復する。



「………って、王様!!!?」


こ、コイツが!?と、キングを見つめる。


「やだなー。死神ちゃん、そんなに熱い視線向けないでよー」


嘘だぁーーー!と、心のなかで叫ぶ。こんな軽そうな奴が、この下界を治めていたのかと、不安になる。


「僕の直属の上司です」


魔法使いの言葉に、更に衝撃を受ける。直属ってことは…


「アナタ、王様の側近だったの!?」


「はい」


そんなに偉い立場だったとは、思いもしなかった。なんだかガックリと項垂れる。色々と衝撃が大きすぎて頭がついていけないわ。


「キング、さっさといきますよ」


「えー」なんて、駄々をこねるキング。


「キング、いい加減して下さい!!」


魔法使いにしては珍しく、語尾を荒げた言い方だった。


「いやだなぁ、ちょっとお話しをしてただけじゃないか、相変わらずお堅いね、魔法使い(ウィッチ)」


そんな魔法使いには慣れているのか、相変わらず笑みを絶やさないキング。


「キングの所為で、一体いくつのとばっちりを受けたか、思い出して欲しいですね」


眉をつり上げながら、キングを見遣る魔法使い。


「あれぇ?そんなことあったかなぁー」なんて言いながら、魔法使いから目線を反らすキング。


「はぁっ。もういです。いいから早く執務に戻って下さい」

呆れたように魔法使いはため息をついた後、
ビシッと扉を指差す。



「え~」


「また僕にやらせようとしているなら、無駄ですよ、今日こそは絶対にご自身でやって頂きますら」


「ふふ。ウィッチは手厳しいなー」

仕方がないとキングは、観念したように、扉へむかう。



「それじゃ、私は行くよ。それじゃぁね、死神ちゃん」

と言い残し、キングは部屋を出て行った。



キングがいなくなり、静かになった空間で、私は口を開く。

「あ、あれがアナタが仕えている王様?なんていうか…私が想像していた王様とはかなりかけ離れているわ…」


唖然としながら呟くと、魔法使いはため息を溢す。


「でしょうね、あの人の女癖の悪さといったら、下界一だと思いますよ」


「そ、そう…」


それ以上は、何も言えなかった。