安心した魔王は、魔法使いから離れた後、再びソファーに腰を下ろした。



「まったく…、わらわはまだまだ若いのだ。死神なんぞに、魂を奪われてたまるものか」


その言葉に少しむっとする。
さっきまでの可愛さはどこへやら。



ごほんっ。と一つ咳をし、「ただし!」と話を切り出す。


私の様子に魔王は、まだ何かあるのか、といった視線を向けてくる。



「完全に魔王…いえ魔王『様』が、死神リストから外れた訳ではありません」


様の部分を強調して話す。
魔王もそんな私の態度に、少しむっとした様子だ。


「だから、何なのだ」


「確認が取れるまでは、私が魔王様を保護させて頂きます!」


私の言葉に驚いたのか、ぽかんとした様子の魔王。しかし、次第に意味を汲み取ったのか鋭い視線を向けてくる。


「なんだと!?つまり、わらわを監視するつもりか!?」


「その通りです」



手違いだとしても、天界から正式な免状が来るまでは、あくまで死神リスト対象者だ。そう易々と、野放しにすることは、仕事上できない。


私の魔王が2人、睨み合っていると、



「お2人とも、そこまでにしましょうか」



魔法使いが、私達の間に割って入ってきた。いつもの笑みを浮かべて。



「魔王様、死神さんにも都合というものがあるのでしょう。どうかご理解を」


ニコッと魔王様に有無を言わせぬ感を醸し出す魔法使い。

そんな彼の様子に、魔王は「う、うむ…」と渋々了承してくれた。



「死神さん…」


魔王が頷いたのを確認した後、魔法使いがくるっと私と向き合うように方向転換する。
真顔で見つめてくるものだから、私は何事かと、少し後ずさる。


「な、何……へっ!?」


突然、ガシッと両肩に手を置かれる。まるで逃がさぬ、といった感じで。



「死神さん、……魔王様の代わりに…」


私をジッと見つめ、言葉を一度切る彼は本気の目をしていた。

私達の様子に、何事かと魔王が視線を向けているのが見えた。…若干、彼女の顔が赤くなっていのは何故だろう。


「か、代わりに…?」

言葉の先を促すように、反復する。


「魔王様の代わりに、…僕を」


僕を?


「殺して下さいぃぃぃぃいい!!!!!」


「はぁぁぁああああ!!!??」


お前!ここでそれを言うかーーーーー!!!!