こんなことがあるのだろうか。

いや、でも死神リストに載っている以上は、私は仕事を遂行しなければならない。

でも、本当にこの子が対象者なのだろうか。何かの手違いではないだろうか。



「わ、わらわは、死ぬのか?…絶対に嫌だ!」


魔法使いのローブをギュッと両手で握りしめているその姿は、魔王と言えど、ただの小さな女の子にしか見えない。


「…………」



そんな姿を見て、私は可哀想になってくる。


「…魔王様」


私が声をかけると、ビクッとなる魔王。


「大丈夫です。魔王様は…、死にません」


なるべく優しい口調で喋る。


「きっと、リストに載ってしまったのは、何かの手違いです」


「ほ、本当か?」


うるうるとした目で私を見上げる魔王。



「ええ。ですからご安心下さい。私が魔王様を斬ることはありません」


ニコッと笑みを向けると、魔王は安心したのか、顔から不安の色が消える。



「ほ、本当だな!…ふ、ふんっ。わらわが死ぬなんて、おかしい話だ!魔法使いよ、わらわはお腹が空いた、何か用意せよ!」


怖がっていたことが恥ずかしかったのか、顔を少し赤くしながらも、魔王は再び最初の調子に戻った。


「承知致しました。魔王様にご満足頂けるような物をご用意致します」


魔法使いは、部屋の隅に控えていたメイドに目を配らせると、メイドは頷いた後、静かに部屋から出て行った。