すっかり油断してたわ。空の上だから~とかって思って、基本的に鍵を締めるということはしていなかった。


私のバカ!


魔法使いは、空が飛べるのだからここに来るのだって、容易だ。

いつも、地上ばかりで追いかけ回されていたから、自然と忘れてたわ。




「ありがとうございますー」


あれこれ自分の反省点を考えている内にも、私はテキパキと動き、椅子に座らせた魔法使いにコーヒーを出す。


私の出したコーヒーに口をつけながら、「お構い無くー」と片手をヒラヒラさせている。

………おい。


「はぁっ」

とため息をこぼし、私は朝御飯ならぬ、お昼御飯を作り始める。



コイツのマイペースっぷりには、もう慣れっこだわ。



キッチンに向かい、食材を切る為、包丁を取り出す。

すると、後ろからガタンッと音がした。
不思議に思い、振り返ると…



「ついに…っ!僕を殺してくれるのですね!?」


その言葉に「はぁ!?」となる。



魔法使いは、椅子から立ちがりキラキラした目で私を見つめる。…いや、正確に言うと、私の持つ“包丁”を見つめている。


「違うわよ!!」


「なんだ…。そうですよね、そんな小さい刃物では、即死はできなさそうですしね」


痛そうだ…。と切な気な瞳をする魔法使い。

痛いのは嫌なのか!?と心の中でツッコミを入れる。


「もう、いいから。静かに座って…」


グッタリしながら、そう告げると、魔法使いはしぶしぶ椅子に座った。


大人しくなったのを確認した後、私は再び料理を再開する。