そう言って、彼らの横を通りすぎ ようとした時、いきなり左腕を掴 まれた。
「うわっ! ……とと、危ないじゃ ―――」 「これはなんじゃ」
「は? これ?」
そして私は、鳥肌が立つ左腕を見 る。
そこには、ごくありふれたデジタ ルの腕時計があった。
「何って、腕時計だよ」
「………」
「もしもし?」
左腕を掴んだまま、男は私の腕時 計をじっくりとなめ回すように眺 める。
さすがにここまで、ねちねちされ るとキレたくなった。
「おい……」
苛立ちのせいか、普段より格段と 低い声が私の喉を通り空気を震わ せた。
「いい加減、手を離せ」
腕を掴んでいた男も、周りの男達 も、私の豹変っぷりに眼を丸くす る。
しかし、腕は掴まれたままだった 。
(いい加減に離せってんだ……)
イライラは、どんどん積もるばか り……。


