けれど数歩進んだ先で、私は何か 嫌な気配を感じ取り、近くにあっ た小石をその気配があるだろう場 所へ投げる。

「いてっ!」

ちょっとした小路(こみち)から、 野太い男の声が聞こえた。

「そこに隠れてる人。出てきなよ 」

そういうと、三、四人の男の人が そこから出てきた。

これを目にした私は、さすがに驚 く。

何せ、人相の悪い人ばかり集まっ ているからだ。

「……私に何かご用ですか? 先を急いでいるので、手短にお願 いします」

そう言うと、何人かがこめかみを ヒクリと痙攣(けいれん)させる。

「なあ、兄ちゃん。一番大切な方 法を忘れてないかい?」

この人がリーダー的な人なのだろ うか、ニヤニヤと笑いながら私に 近寄る。

悪寒を感じて、私は荷物を持った まま後ろへ少し距離を取る。

その行動を見て、その男性は瞠目 するけれど、すぐにまたニヤニヤ と笑みを浮かべる。

(さっきは、すっかり忘れてたけ ど、この展開って……)

『恐喝』の二文字が脳裏に浮かぶ 。

けれど、男の視線が私の荷物を見 ている事に気付き、私はあからさ まにため息を吐く。

そして体勢を普段通りに戻す。

「あの、この中にあるのは剣道に 使う防具と竹刀だけですよ?」

そう言うと、ピタリと男の歩みが 止まる。

「こんなのお金になりませんし、 私も無一文ですので」

無一文というのは嘘だけど、何と なくそう言わないといけない気が した。

「それじゃあ、今度こそさいなら 」