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う~ん……と、道端で考えている と、背後に少しの衝撃が荷物を通 して伝わり、私は前へつんのめっ た。

「いってーな……」

「?」

後ろを振り返ると、さして痛くな さそうに自分の腕をさするおじさ んがいた―――んだけど……。

(………ちょんまげ?)

そのおじさんは、私と同じ袴姿で 、ちょんまげをしていた。

(あれ? 間違えて映画村に……て 、ないよ!)

思わず一人ツッコミを脳内で繰り 広げてしまった。

映画村なんて、私の進行方向と全 く真逆なうえに、徒歩で行けるよ うな距離じゃない。

「おい、兄(あん)ちゃん。骨折し ちまったじゃねえか」

(は? 骨折……?)

ボー……としていたけど、おじさ んの声で意識をおじさんの方へ向 ける。

まだ腕をさすっていた。

つか、骨折するほどの固くて重い のなんて―――。

「あ……」

そして私は、背に背負っている防 具の中にある、とある物の存在を 思い出す。

(あれ? でも……)

「おい、兄ちゃん! 聞いちょる のかっ!!」

(ん? 『聞いちょる』……?)

「おじさん」

そう私が発すると、おじさんは一 瞬にして硬直してしまった。

でも、そんなの構わないや。あと で謝ろう。

「剣道の防具で骨折するなんて、 カルシウム不足なんじゃない? ちゃんと摂取しないと、将来骨粗 鬆症(こつそしょうしょう)に悩ま されるよ? それと、その格好でちょんまげは 止めなよ。コスプレさんと勘違い されるよ」

そう言って私はもう一度進行方向 に向くけど、あることを思い出す 。

「あ、そうそう。おじさんって呼 んでごめんね。 そいじゃあね」

一応、謝ったけど、女の子である 事は黙っておくことにした。

………本当はすごく悲しいけどね 。