「確かに2人きりだったんだけど、花火が上がった後に、じゃあ帰ろうかっていう話になっちゃって。」


花火は私の告白を邪魔するだけでは満足できなかったのか、私と成瀬君の時間まで邪魔していった。


音楽が終わった後に、花火が上がれば、誰もが「文化祭は終わったのだ」と思ってしま
う。

私達もその雰囲気に呑まれてしまったのか、気が付けば屋上を後にしていた。


今、思えば、屋上で引き止めれば良かったのだけれど、その時の流れとか、雰囲気がある。自分の気持ちだけではその流れを止めることができなかった。


「帰り道が途中まで一緒だったから、2人で帰ってたんだけど、結局きっかけがつかめないまま、世間話して別れちゃった。」


「そっか~、残念だったね・・・じゃなくって、一体どうするのよ?後2日しかないんだよ?」


「そ、それは・・・どうしよう?・・・」


フォークダンスの時の大胆さは一体どこへいってしまったんだろう?


成瀬君の携帯に自分のメールを送った時の、まるで自分が自分じゃなくなったような、あの不思議な感覚がもう一度欲しい。


「あ・・・そうだ。そういえば、私、成瀬君のメアドと電話番号知ってるんだった。」