「あのね、成瀬君。」


その温かさが名残惜しくて、離したくなくて、まだ側にいて欲しくて、呼び止める。


「私、成瀬君の事がね・・・」


告白という本来の目的を果たすためには、絶好のロケーションでシュチュエーション。


大丈夫、大丈夫だ。成瀬君の前以外では、何度も言えた。きっと上手くいく。


言葉を紡ぐ為に、空気を吸い込む。声帯を震わせて、「好き」っていう2文字を風に乗せようと試みる。


大事な事を言おうとする度に、何かに邪魔されてきたタイミングの悪い私でも、まさかこんな物に邪魔されるなんて思いもしなかった。


一度目は担任の宮元先生。二度目は雨。じゃあ、三度目は?


空に響く爆音。真っ黒なキャンパスに描かれる、青や、赤や、黄色。

その美しさと強烈な音に、私の「好き」は掻き消されて無くなった。


三度目は花火。生徒会が企画した、最大のサプライズに、私が持っていた最大の勇気はあっけなく打ち砕かれた。


成瀬君が転校してしまうまで、後2日。・・・ちゃんと想いを伝えられる時は来るのだろうか?