「200円のお返しになります。ありがとうございました~。」
お客様に深いお辞儀をして、手に持った500円を箱の中に入れる。
箱の中は、菊や平等院鳳凰堂、野口英世等、日本を代表する偉人や花、建築物でいっぱいだ。
現在夕方の4時30分。文化祭も後半に入り小腹が空いたのか、ガラガラだったお店は再び人で賑わい始めた。
デカデカと「焼きソバ!おいしいよ!」って書いた看板も、女子全員で屋台に飾りつけた可愛らしい絵や小物も、充分な客寄せになっていたと思うけど、
「おーい、綾瀬、頑張って扇いでくれよ~。」
今、私のやっているこの作業が一番の客寄せになっていると思う。
「はいはい。森山君も頑張ってガンガン作ってね~。いっぱい作っておかないと後で大変になっちゃう。」
焼きソバを調理している森山君をうちわで扇ぐ。正確には、森山君の近くに立ち上っている、美味しそうな匂いのする煙を。


