「それと、今日はゴメンね。1人ぼっちにしちゃって。」
いくら作戦とはいえ、ミィを学校に残してきたことが心残りだった。
あの後、雨も降り出してしまったし、悪いことをしてしまったなと思う。
「いーよ。1人だと普段行かないような所もウロチョロできたから、なかなか楽しかったし。」
「普段行かない所?それより、傘持ってたの?よく雨の中歩き回ったね。」
「カバンの中に、折り畳みの傘が眠っててさ。商店街の路地裏をウロウロ散歩してたの。
そしたら、いい喫茶店見つけちゃって。今日は閉まってたみたいだったけど。」
「それ、何て喫茶店なの?」
路地裏にある喫茶店なんて聞いたことがなかった。路地裏で商売しようなんて、利益を出す気があるのだろうか?
「内緒だよ。コトが成瀬君に告白できたら、一緒に行こうよ。そしたら、タダで美味しいもの食べれるかもしれない。」
「タダで!?何なの、そのお店。すっごい気になる!」
「いや、今のは『告白』ってところに反応してほしかったんだけど。」
「も、もちろん、頑張ってみるよ。その為にダンスに誘ったんだし。でもタダだよ?無料だよ?そんなの信じられない。」
「お金を取らない店」なんて聞いたことがないし、それは店ではないと思う。
「さっきも言ったけど、告白できたら教えてあげるってば。それじゃ、期待してるから頑張ってね~。」
一方的に会話を打ち切られて、携帯からブツッという、コミュニケーション終了の音が聞こえた。
「あ~、気になるなぁ。」
電話をポーンとベッドに放って、私もベッドに仰向けになった。
喫茶店も気になるけれど、最優先事項は成瀬君への告白だ。
今は頭の片隅に追いやろう。
私の部屋の白い天井を見ながら、文化祭へと思いを馳せる。
運命の日は、12時を過ぎて日付が変わった為に、1日後に迫っていた。


