恋愛喫茶店 ~恋と一緒にスイーツを~

「もう、笑いすぎだっつーの。文化祭の日曜までには、絶対伸ばしてやる。」


「後2日しかないんだけど……」


「なんとかなる!ドリンクバーに牛乳無かったっけ?」


「お茶とジュースくらいしか無かったよ。そんな無理するとお腹壊しちゃうって。」


席を立とうとする成瀬君を、落ち着いてという感じでなだめる。

こういう1つのことに、夢中になる成瀬君も凄く魅力的だなぁと思う。


「……そうだよなぁ。無理して踊れなくなったら元も子もないし。」


コップを持ったまま、席に着く成瀬君。

コップを置いて、その手をゆっくりと私の方へと伸ばしていく。


「んじゃ、パートナー成立ってことで、ほい。」


伸ばした手は、私には触れず、私と成瀬君の中間地点へ。


「うん、よろしくね。後夜祭は7時からだから、中庭で待ってる。」


私もその場所へ手を伸ばす。


そうなれば、自然と2人の手と手が重なり合って、握手する形になった。


私と成瀬君にしかわからない、パートナーの誓いができたことが凄く嬉しくて、
文化祭までの約48時間が凄く待ち遠しかった。




………ここで、浮かれきって、周りの見えていなかった私は、やはり「恋愛初心者」なのだろう。


恥ずかしがらずに、成瀬君の顔をきちんと見ていれば気付けていたかもしれない。


「誓い」をした時の、喜びの中に、ほんの少し浮かび上がった悲しみと苦しみがブレンドされた、複雑な表情に。