「どうしてって…やっぱり男は、女の子をリードするべきというかだなあ。」
ゴニョゴニョと口ごもる。何が言いたいのか、さっぱりわからない。
「え~っと、つまり、どういうことかな?」
わからないから、先を促す。何だか、生徒の話を聞いてあげている、先生みたいだ。
「そのぅ、ダンスとなると、背の高い男がいいんじゃないのか?俺は、綾瀬と同じ位の身長だから、上手くリードできないかも。」
頬をカリカリと掻きながら、ぶっきらぼうに言い放つ。
どうやら成瀬君は、自分の身長に自信が無いみたい。
そんなに気にしなくても…と思うんだけど、これが男の人の「プライド」なのかなぁ?
「いいよ。別に上手くリードできなくても構わないから。」
成瀬君だから誘ったんだしね。という言葉は胸の奥にしまっておいた。
「わかった。でも、これだけは聞かせてくれ。綾瀬は身長何センチだ?」
「う~んと、168.3センチかな。その、成瀬君は?」
私からの問いかけに、成瀬君は、しばらくう~んと唸った後、
「……168.31センチ……」
という、いかにも後出しジャンケンみたいな方法で、私との背比べに勝利した。
「……」
じ~~~っと成瀬君を見つめる。
…見つめる。
……見つめる。
「あ~~~っ!!わかったわかった!168.3センチです!ぴったり綾瀬と一緒でございますよ!!」
成瀬君がついた0.01センチの嘘。
170とか大見得切らないのが、本当に成瀬君らしくて、私はクスクスと笑いっぱなしだった。


