ピンポーン
誰かが、店員呼び出しボタンを押したのだろう。
その音で、時がはじけて、動き出した。
「え?踊るって、ここでか?」
拭いていたズボンから、私へと目を移し、成瀬君が首を傾げる。
「起承転結」の、「結」の部分だけを伝えてしまうと、こういうことになるんだなぁ。
「違うの!文化祭の後夜祭で、参加自由のフォークダンスがあるでしょ?」
伝えられなかった残りの部分を伝える為に、再び喋りだす。
「だから…その…一緒にどうかなって思って。」
成瀬君からの返事を、ずっと待っていた。
どんな答えでも、きちんと受け止めようと思いながら。
「俺はいいけど…綾瀬は俺なんかでいいのか?」
でも、こんな答えは、私の考えている答えの内容には含まれていなくって。
「え?どうして?」
だから、こんな当たり前の質問しかできなかった。


