恋愛喫茶店 ~恋と一緒にスイーツを~

「ごめんっ!」


何がごめんって、グラスの倒れた方向だった。

私の方なら良かったのだけど、前に押し出す感じで倒したグラスは、成瀬君の方に倒れてしまっている。


急いで、花柄のハンカチを取り出す。

テーブルの上に撒かれたお茶は、行き場を失って床にポタポタと落ちてゆく。

きっとその内の何滴かは、成瀬君に落ちてしまっているだろう。


「これ、使って。本当にごめんね。」


取り出したハンカチを成瀬君の手の上に置く。


「大丈夫だから、落ち着いて。綾瀬はテーブル拭いてくれるか?」


ハンカチを受け取りながら、私に指示を出す。

膝の部分が濡れていて、ズボンの色が変わってしまっていた。


「う、うん。わかった。」


頭の中が混乱して、思考が上手くまとまってくれない。
今まで考えていたことが、私の頭を駆け巡る。


成瀬君、文化祭、焼きソバ屋、一緒にいたい、ダンスに誘う。

5つの単語がグルグルグルグルまわって、マワッテ、回って……


「成瀬君!私と踊ってくださいっ!!」


ファミレスの喧騒、テーブルを拭く私、ズボンを拭いている成瀬君。

全ての風景がまるで1つの絵になったように、時が……止まった。


国語の授業で「起承転結」を習ったことがあった。

簡単に言うと、人に物事を伝える時は、筋道を立ててわかり易いように説明しましょうってこと。


……でも、国語の苦手な私にそんなのできるわけないじゃない。