恋愛喫茶店 ~恋と一緒にスイーツを~

「そういえば、今週の日曜は文化祭だな。」


成瀬君がこの話は終わりといった感じで、話題を変えてくる。


「私達のクラスは焼きソバ屋だったね。ちゃんと儲けが出るのかちょっと不安。」


文化祭で思い出したけど、私は成瀬君をダンスに誘わなければいけなかった。

いつでも言い出せるように心の準備をしておかなくちゃ。


「材料費は学校が出してくれてるわけだし、儲けが出ても、全額寄付になるんじゃなかったか?」


そうだった。確か、近くの老人ホームに寄付するんだったっけ。

毎年、4~5台くらいの車椅子が買えるくらいの額が集まるらしい。


「うん。でもやるからには頑張って売って、儲け出したいよね。」


「なるほど。綾瀬が30パックくらい焼きソバを買ってくれると。」


「え~っと……2、3パックくらいなら……」


「冗談だって。俺達は売る側だし、余ったやつを食べればいいと思うよ。店主の特権ってやつだな。」


「……それ、職権濫用ってやつじゃないの?」


「いーの、いーの。汗水流して働いた労働の報酬ってことで。綾瀬はどの時間帯に入ってるの?」


「え~っと、私は3時から6時までだね。成瀬君は?」


9~12時、12~3時、3時~6時の三つにわけて、クラスメイトが入れ替わりでお店を切り盛りする。私はラストだから、後片付けのおまけ付きだ。


「俺は12時から3時。昼飯時だから忙しくなりそうだし、腹減るだろうなぁ。」


「30パックくらい食べられそう?」


「う~ん…2、3パックくらいなら…ってこの会話さっきしたぞ。いつの間にか立場が入れ替わってるし!」


からかわれて、からかって、2人で笑いながら過ぎていく時間を初めて経験した私は、気分が浮かれていて、注意力が散漫になっていたのかもしれない。


ポテトを取ろうと手を伸ばした先には、ウーロン茶たっぷりのグラスが1つ。


ガチャンと音を立てて、グラスから氷と液体が溢れ出した。