「今日の英語のテストの出来はどうだったよ、綾瀬?」
器に盛られたポテトに、手を伸ばしながら、成瀬君が聞いてくる。
今日、学校で起こった最大の出来事といえば、やはり英語のテストだろう。
……成瀬君の転校を除いてだけど。
「うん、まぁ、最高…のできかな?」
「って、何で最後が疑問形なんだよ?あーーーっ!俺も綾瀬みたいに英語できるようになりてぇ。」
あははと笑って、私もポテトに手を伸ばす。
最高に最低な結果だったのは、成瀬君には内緒にしておこう。
どこにでもある、ありふれたチェーンのファミレスで、私と成瀬君はお喋りしている。
私が居て、間にポテトがあって、成瀬君が居る…そんな風景。
周りから見れば「日常」の風景で、特筆するべき所なんてなにもないけれど、私にとってこの風景は「非日常」だ。
成瀬君と2人でお喋りの部分が特に。
「そういえば成瀬君、何で私が、英語得意なの知ってるの?」
「いや、若宮がいつも言ってるじゃん。コト英語教えて~って。」
喋り終わったと同時に、ドリンクバーで注いできたウーロン茶を、ストローですする。
ふと見ると、成瀬君もオレンジジュースを飲んでいたようで、行動がシンクロしていたことが、恥ずかしくも少し嬉しかった。
「俺も綾瀬に英語教えてもらいたいよ。…と言っても、もう転校するんだけどな。」
成瀬君にとってはちょっとした冗談だっただろうけど、その冗談は、私を笑わせるどころか、気分を憂鬱にさせるだけだった。


