「とうとう、降り出してきちゃったね。急いで帰らないと、びしょ濡れになっちゃうよ。」
1粒は2粒に、2粒は4粒に。一度降り出した雨は、止まることを知らない。
一緒に帰り始めて、たったの5分。
こんな短時間で、話を文化祭にまで持っていける話術を、私が持っている筈も無く、できたのは天気の話だけだった。
先生に邪魔されて、おはようって言えなかったし、今度は天気に邪魔されて、ダンスに誘えなさそうだし、私ってばタイミングの悪い女なのかなぁ?
成瀬君の前なのに、気持ちがゆっくりと沈んでいく。
今日言えないなら、文化祭の当日に言うしかないと覚悟を決めた。
「なあ、綾瀬?」
自分の未来っていうのは、天気と同じようなもので、予測もできなければ、その先を知ることもできない。
「急いで帰らなくてもいいし、びしょ濡れにもならない方法…知ってる?」
それはとても不安なことで、その先にはイヤなことや、目を背けたくなることがあるかもしれないけれど……
「ほら、あそこのファミレスでしばらくゆっくりしていこうよ。」
こういう「予測できないこと」なら、何度でもあって欲しいな。


