外へ出ると、湿った重たい風が、私にまとわりついてきた。
これは、雨が降る直前の風だと肌で感じる。きっと、しばらくしない内に雨が降るだろう。
「天気…悪いね。」
話し出すきっかけ作りの為に、天気の話を持ち出す。
机と椅子を挟んでいない成瀬君との距離に慣れていない私は、自分で思うよりも緊張していた。
「そうだな。思ったより早く雨が降ってきそうな感じがするよ。綾瀬は傘持ってきてる
か?」
「ううん。持ってきてない。まさか、今日、雨が降りそうなんて思いもしなかったから。」
今日の天気予報は、晴れ後晴れ、所により晴れだった。
降水確率も0%で、傘を持っているのは、日焼けしたくない奥様方だけ。
「だよなぁ。あんな予報聞いて、誰が傘持ってくるんだって感じだよ。」
青色の無い空を見上げながら、少し笑いの混じった声で、空に文句を言う。
空は文句を言われたことに腹を立てたのだろうか、
「うわ!つめたっ!」
成瀬君の顔へと大粒の水滴を落とした。


