「コトはいつから、成瀬君好きだったの?」


スプーンを私の方に向けながら、ユラユラさせて、私の答えを促す。

ミィの前には、光を反射してキラキラ光っているクリームあんみつがある。


「うーん、好きだって気付いたのは1年生の9月くらいかなぁ?」


私の前には普通のあんみつ。


オゴってもらっているし、一番値段の安いのを頼もうと思ったからだ。

良く冷えた寒天の喉越しが、とても気持ち良い。


「へぇ~、じゃあ丁度1周年だね。…の割には全然進展してないケド?」


「…う。だって、どうやって話しかけたらいいか分かんないよ。」


挨拶やお別れを言うのは簡単だけど、ちゃんと話そうとするのはすごく難しい。
会話を続けるってどうすればいいんだろう?


「昨日のテレビ見た?とか、普通の内容でいいじゃん。大丈夫だって。」


普通の内容を話しかける勇気も、それを長続きさせるテクニックも今の私には無かった。


私が、恋にこんなにも臆病だったなんて、知らなかった。
だって、これが初恋だから。


成瀬君を好きになって始めて、自分の知らない部分が見えた。


これが「恋愛の力」というやつなのだろうか?


「恥ずかしいのは分かるけど、積極的に行かないとダメだよ。成瀬君、誰かに取られちゃってもいいの?」


「それはヤダ!」


何事かと、私に客の視線が集まる。
あまりの恥ずかしさに、体が亀の様に縮こまった。


「よく言った!はい、ご褒美ね。」


ミィが笑いながら、私のあんみつの上に、クリームを乗せてくれた。


成瀬君の前以外では、こんなに積極的になれるのに
成瀬君の前では、全然積極的になれない。


これも「恋愛の力」?…だったら、やだなぁ。