「――――風邪引くよ?」


「!」


突然の雨に遭い、雨宿りしていた私の前に現れた、一人の男性。

その人の傘を持った手に釘付けになる。

だって、私はその手をよく知ってたから。


「先輩!?」


あなたは会社の先輩…そして、私が密かに想いを寄せる人。


「雨宿りしてんの?…やみそうにないし、駅まで送るよ。入って」


あなたの優しい笑顔が見えて、私は視線を落とした。

………いいのかな…?って、一瞬悩んだ。

だって、近くにいたら触れたくなるから。

…………欲しくなるから。

あなたの左手の薬指には、指輪が光ってるのに…。

私がいくら欲しがっても、叶わないのに―――。