待ちに待った夏休みに突入し、

部活もしてない俺と絢は、

お互いの家を行き来して宿題を進めている。


「慧くんの宿題、凄い量だね……」

「ん、まぁ、どこも特進タイプの科なら普通じゃね?」

「えっ、そうなの?」


確かに、絢の量に比べたら倍以上はある。

けど、中身はそんなに難しくない。

毎日ちゃんと授業聞いてたら簡単だろ。


「やっぱり、頭のいい人は違うんだね」

「絢だって、だいぶ成績上がったじゃん」

「慧くん様さまだから」

「それでも、投げ出さずやり切ったんだから実力だろ」

「そんなこと言うの、慧くんくらいだよ」


はにかむ絢は緑茶を口にしながら、

数学のプリントを解き始めた。


「なぁ、大学とか進路決めたか?」 

「まだだけど」

「んじゃあ、将来の夢とかは?」

「何も決めてない」


だと思った。

前々から、やりたいものが無いとずっと言ってるから。


「俺と同じ大学に行くか?」

「はっ?!無理ムリむり無理、頭良くないし、私立の大学でも厳しいと思うからっ」

「そうか?……俺の見立てじゃ、そこそこの大学に行けると思うけど」