腕をほんの少し緩めて、視線を落とす。
見た目ではさほど変わらない。
俺の気のせいか?
あ、そうか。
夏服で薄着になるから、
パットの厚みを変えたのか。
前に彼女が言ってたから。
夏は視線が怖くて嫌いだって。
だから、必然的に厚めのもので対応してると。
そんな面倒なこと、いちいちしなくていいのに。
ってか、俺以外の男に
見せびらかすような真似はして欲しくない。
むしろ、他の奴らの視線が向けられないように
小さいままでいいと思ってる。
それじゃなくても、絢は可愛くて注目の的なのに。
「慧くんちに行きたい」
「ん」
「期末試験対策、お願いします」
「分かってるって」
漸く機嫌が少し直ったのか、
ほんの少し表情が明るくなった。
来週から期末試験がある。
科が違うから範囲も違うんだけど、
絢が勉強してる範囲は把握してる。
彼女は呑み込みが悪いだけで、要領はかなりいい。
だから、最初で躓かなければ、結構出来る。
俺の教え方がいいからだと思うけど、
もう少し頑張ったら、特進科でもいけそうなくらい。
本人はそんなこと、全く気にもしないだろうけど。