「過保護というほど桐箱に入れて育てたわけじゃないですけど、この3年間、毎日少しずつ手放すための努力をして来ましたから」

「そういう期間がうちらにも必要だな」

「そうね」


ゆずちゃんの父親の意見は至極当然だ。

俺に一人娘がいたら、たぶん即答は出来ないだろう。


優しい眼差しを向けてくれる絢の両親に深々とお辞儀した。


「大事な娘さんを攫うような真似を許可して頂き、本当に感謝してます。有難うございます」

「慧くん、娘を宜しく頼むよ」

「はい」

「やだっ、私が絢ちゃんを嫁に出すみたいで、泣きそうだわっ」


ゆずちゃんの母親が、目に涙を滲ませた。

昔からよく知っているからだろう。

俺らは本当に恵まれている。

交際自体を反対する親も多い中、

交際を許可して貰い、こうして温かく見守って貰って。

その先も、当然のように受け入れてくれる両親達に

感謝してもしきれない。


俺らは、感謝の気持ちも込めて

両親らに花束を手渡し、お酒を次に回った。


そして、一番大事なことは

約3年前に出会い

心変わりもせずにずっと想い続けてくれた恋人に

最大の感謝を込めて……。


卒業は新たな人生のスタートだ。

そのスタート地点に

同じ相手がいてくれることが何よりも嬉しくて。


「これからもよろしくな」

「こちらこそ、よろしくね」


~FIN~