卒業式当日。
朝からママは張り切っていて、
朝一で着付けとヘアセットをして貰って来たようだ。
朝食を摂ろうとダイニングに下りたら、
着物姿のママがいた。
慧くんママと色違いの着物らしい。
いつの間に準備してたのかと驚くけれど、
『卒業式』は子供だけの行事ではないと。
パパは仕事を休んだようで、
リビングで株価をチェックしながら、
部下に指示を出していた。
こんな風に家で朝食を摂るのもあと僅か。
3月下旬になれば、イギリスに発つ予定だから。
「ママ、自分でよそるからいいよ」
「ごめんね?パパの珈琲用意するわ」
何気ない会話。
よくある親子の会話だけど、
この会話も暫くなくなるのかと思うと、
寂しさが込み上げて来る。
*
朝食を済ませ、身支度をしていると慧くんが迎えに来た。
「絢~~、慧くんが来たわよ~」
「はぁ~~い」
2階から玄関へと下りると、
ネクタイをした制服姿の彼がいた。
普段はネクタイを結ばず、
終業式とか全校集会が行われる時だけ着ける彼。
『卒業式』だから当然なんだけど、
この姿も、今日が見納めだ。