卒業式当日。

朝からママは張り切っていて、

朝一で着付けとヘアセットをして貰って来たようだ。

朝食を摂ろうとダイニングに下りたら、

着物姿のママがいた。

慧くんママと色違いの着物らしい。

いつの間に準備してたのかと驚くけれど、

『卒業式』は子供だけの行事ではないと。


パパは仕事を休んだようで、

リビングで株価をチェックしながら、

部下に指示を出していた。


こんな風に家で朝食を摂るのもあと僅か。

3月下旬になれば、イギリスに発つ予定だから。


「ママ、自分でよそるからいいよ」

「ごめんね?パパの珈琲用意するわ」


何気ない会話。

よくある親子の会話だけど、

この会話も暫くなくなるのかと思うと、

寂しさが込み上げて来る。



朝食を済ませ、身支度をしていると慧くんが迎えに来た。


「絢~~、慧くんが来たわよ~」

「はぁ~~い」


2階から玄関へと下りると、

ネクタイをした制服姿の彼がいた。

普段はネクタイを結ばず、

終業式とか全校集会が行われる時だけ着ける彼。

『卒業式』だから当然なんだけど、

この姿も、今日が見納めだ。