2月下旬に絢の誕生日がある。

去年は絢のリクエストで

『俺好みのスカート』を買ってあげた。

というのも、9月が誕生日の俺が、

『絢好みのシャツ』をリクエストしたからで。


普段外出するようなデートをしないから

そういうイベントがかなり特別に感じられて。

俺に気を遣ってか、強請るような素振りも見せない。


「要らない」

「は?」

「その代わり……」

「ん?……言ってみ?」

「見捨てないって、約束してっ……」


『誕生日』という日の、

『プレゼント』という愛情表現のアイテムというか。

コマンドのような、関係性を保つための指令なのに。

それを放棄してまで、『俺』という存在を選んだ絢。


彼女の中では、俺は絶対主君のような存在なのだろうか?

主従関係のような位置づけで捉えていそうで不安になる。

求められているうちは華だが、

それに疲れ切ったら、潔く諦めるという選択肢がありそうで。


絢の瞳が『不安でいっぱい』と言っているようで。

思わず、彼女を抱き締めた。

そんな気持ちにさせてるのは俺だから。


「何度言ったら分かるんだよ。見捨てたりしないし、嫌いにもならないから」