「絢のこと、よろしくね」

「……はい」

「買い物に行って来るけど、お夕飯、何がいい?」

「何でも大丈夫です。アレルギーも好き嫌いも無いので」


落ち込む娘を慰めて貰いたいという願いが込められた視線。

俺は優しく微笑んで再び会釈した。



「絢、少しは休憩したら?」

「大丈夫っ」


力加減が極端というか。

余程ショックだったようで。

半泣き状態で、無我夢中で勉強に打ち込んでる。


進学先が決定してるわけだから、

実質のところ、卒業までのんびり過ごしたって構わない。

けれど、今の彼女にはそれが通じない。

一度気を緩めた結果に、完全に打ちのめされたわけだから。

分からなくもない。

俺だって、これまで何度も悔しい思いをしたから。

それを表に出さなかっただけで。


「絢」

「……なぁに?」


英語の長文を何度も書き写してる絢。

手元に視線をロックして、俺の方を見ようともしない。

そんな彼女の頭を掴んで、俺の方に向けさせる。


「俺の話、聞いて」

「……ごめんなさいっ」

「誕生日プレゼント、何が欲しい?」

「え?……あっ」