「紙に書くか?」

「へ?」

「LINEでもいいけど」


彼の表情は至っていつも通り。

私だけが焦っているというか。


彼がスマホをポケットから取り出したのを見据え、

私も鞄の中からスマホを取り出す。

すぐ隣りにいる彼にメッセージを送ろうと

脳内のあるワードを入力しようと試みるんだけど、

それすら出来そうにない。

だって、それを打って送信したら、

ガツガツした女だと思われたら嫌だもん。


「カウントするぞ」

「えぇぇぇぇ~~っ!!」


こういう時に限って彼は意地悪にカウントする。

さっきもカウントされたばっかりなのに。

ここ最近、優しい王子様スタイルだったから

すっかり忘れてた。

彼がドSな腹黒俺様王子だという事を。


「い――――――ち」

「えっ、ちょっ……待ってっ…」

「に――――――い」

「ちょっとぉぉぉ~~っ」

「さ―――――「もうっっ!!」


降参。

彼には口で勝てそうにない。

いや、勉強でも容姿でも、だけど……。

勝ち目のない勝負はするだけ無駄だ。


フゥ~~ッと大きな溜息を溢して、彼を真っすぐ見据えた。