慧くんからのお願いごとは、『名前』を呼び捨てにすること。

事情を聞いたら納得なんだけど、

『慧くん』って呼ぶのだって恥ずかしい時があるのに、

ハードルが一気に上がって……。

確かに、見知らぬ女性から呼び捨てにされてる彼を

何の感情もなく生活するのは、たぶん無理。

絶対大小の差はあれど、嫉妬すると思う。


だから、彼の提案は返って有難い。

彼女なのに、私が呼び捨てにしてないのに

馴れ馴れしく彼を呼び捨てにされたら、絶対凹むもん。


直ぐには無理でも。

少しずつ努力しようと思う。

彼の一番傍にいる女性が、私であって欲しいから。


「絢の、……3つめは?」

「………えっとね」


言える?

いや、無理じゃない??

脳内ではちゃんと、何度もシュミレーションしたけど。

いざ、本人目の前にしたら、言える気がしない。


「メールじゃダメ?」

「どういうこと?」

「言いづらくて」

「……そういう系なの?」

「………たぶん」


そういう系……って、どういう系??

まぁ、慧くんの脳内で弾き出した答えは、

それほど間違ってないというか……。

あ゛ぁぁぁあああッ!!

なんて切り出そうっっっ。