「名前で呼んで」

「??……呼んでるよ?」

「くん、要らない。付けなくていい」

「ッ?!……無理っ、無理むりムリッ!」

「拒否権なしのご褒美券じゃねぇの?」

「っ……」


大学に進学したら、無条件で海外の人と友人になるわけで。

海外なら、当然『くん』だなんて使わない。

『Kei』と呼び捨てにされるわけで、

親しくもない友人からでも当たり前で。

今は気にしてないし、思いもしないだろうけど。

絶対、その場になったら、

コイツは臍を曲げるに決まってる。

それほど仲のいい相手でなくても

俺が『Kei』と呼ばれることを。

だから、今から……。

絢にも『慧』と呼び捨てにして貰いたい。


「海外じゃ、名前を呼び捨てにするから」

「……うん」

「絢の知らない女に、俺が呼び捨てにされてて平気か?」

「っ……」

「だから、今のうちから絢は練習しとかなきゃ」

「うぅっ……」

「試しに呼んでみ?」

「ッ?!」


くりっと大きな瞳が更に見開いた。

その瞳が微妙に揺れてる。


「ん、いいから言ってみ?」

「………け……ぃっ//////」

「よく出来ました」


ぎこちないけど。

まっ、こんなもんでしょ。

照れる絢の頭を優しく撫でてやる。