9月下旬に無事、結納を交わした。

と言っても、よくある結納の品を交わして

レストランの個室で食事をしただけだけど。

あ、それと。

記念写真だけでもと、両親のたっての希望で。

絢は、めちゃくちゃキレイ可愛い振り袖姿を披露してくれた。

一人娘ということもあるし、

この先、暫く離れて過ごすという事もあるから、

絢の両親の力の入れようはハンパない。


こんなにも沢山の愛情を受けて育った娘を

いとも簡単に掻っ攫ってしまうようで。

申し訳なさと、この先の長い人生において

自分も家族として迎え入れて貰いたいという願望が

何とも言えないほど、複雑に交差する。


正式にプロポーズしたわけじゃない。

だけど、両家の両親は、完全にしたと思い込んでる。


絢も絢で、それ自体を忘れているというか。

目の前の『安心』に騙されてるような感じで。


内心、このタイミングで言うべきなんじゃないか?と、

心底焦りまくりで動揺してるんだけど。


でも、やっぱり。

自身の足下をしっかりと固め上げた時に言いたくて。

情けないし、卑怯な男だと思うけど。

あと数年だけ待ってて欲しい。

その日が来たら、ちゃんと伝えるから。


両家で撮った写真を見つめ、

微笑む絢を見据えて、心の中で詫び続けた。