「おっ?!その表情だと、思い出したみたいだな」


私が驚愕の表情で見つめると、

そんな暢気な答えが返って来た。


「どうしたの?……急に」



目の前の男の正体が明らかになった。


彼の名前は佐伯達則(さえき たつのり)。

やっくんの5歳上のお兄さん。

小さい頃はよく一緒に遊んだ仲だ。



「絢」

「ん?」

「今日から達則君に家庭教師をして貰おうと思うんだけど」

「へ?」

「本来なら大学4年で忙しい時期らしいんだけど、大学院へ進むんですって」

「………それで?」

「だから、勉強がてら教えてくれるって」

「は?………誰も頼んでないよ?」

「あっ、お前、それ酷い言い方だな」

「だって……」



別に家庭教師なんて要らないよ。

私には慧くんがいるし。



私が納得のいかない表情を浮かべると、