別に、お泊りしてる間に何かしようとかは考えていない。

少し前にゆずの家に行った時に、

『長く付き合うコツ』という特集が書かれた雑誌を見て

そこに書かれていたのが、『生活環境の共有』という概念。


大人の交際であれば、『同棲』という枠組で

お互いの生活スキルを確認し合えるけど、

高校生の私達には、それは無理だから。


沖縄旅行を通して、

今まで知らなかった慧くんの素の部分を少し垣間見れて、

それを少しずつ増やせれば……と思ったのがきっかけ。


だって、あの澄ました顔のクール王子が、

あんなにも汗を掻くとは思いもしなくて……。

じとっと額や首に汗を掻くことはあっても

ポタポタ垂れるほど、汗を掻いたのを見たこと無かったから。


たぶん、私が知らない慧くんはまだたくさんある筈。

そういう慧くんを知ることで、

彼のことをもっともっと好きになれそうな気がして。


「絢、何飲む?」

「あったかいのなら、何でもいい」

「ケーキあるから、紅茶でいい?」

「うん、いいよ~」


キッチンで飲み物を用意して、

慧くんママお手製のシフォンケーキを手にして2階へと。