「杏? どうしたんだ?」 またしても返事はない。 「おい、具合でも悪いのか?」 そう言いながら近づくと、杏が震えてるのがわかった。 「あ、先生」 「ん。 どうした?」 「いや、あの……」 そう言ってる声はさっきとはちがう震えた声 俺は杏を抱きしめた。 「先生?」 「震えてたから」 「……お母さんが病院に運ばれたのが夕方なの。 だから、……」 「うん、もう話さなくていいよ。」 杏をさらに強く抱きしめて頭を撫でた。