「相変わらず癪に障る言い方をする」
急にジェゾがジルに向かって、ヒュッという音を立ててクナイを突き刺す。
咄嗟にジルは、それを右腕で受け止めた。
「お互い様だろ」
ジルは鼻で笑った。
二人のその姿は、まるで片腕だけで鍔迫り合いをしているようだった。
「苛つく腕だ」
ジェゾは薄ら笑いを浮かべた。
たかが腕なのにクナイを受け止めて、尚且、肉に刺さらないことが余計に彼を苛つかせるのだろうか。
――すごい
ジェゾはクナイを持っている手と、空いているもう片方の手にナイフを持ち換え、ガラ空きになっているジルの左脇腹にナイフを突き刺そうとする。
「っと!!!」
ジルはその手首を左手で掴んだ。
「っ!」
ジェゾが眉間に皺を寄せる。
すると今度は彼がジルに足払いをした。
「ぅおっ!!?」
間抜けな声を出して、ジルはすっ転ぶ。
「ジル!!?」
「あいたっ」
すぐにジルが顔を上げると、ジェゾが冷めた目でクナイを突きつけていた。
「……はっ」
ジルは諦めたように薄笑いをする。
彼の汗が輪郭をなぞって地面に落ちた。
それを見た私とリャノは自分達の武器に、徐に手をかける。
これから私達がすることが分かったのか、ジェゾはジルに向けていたクナイを仕舞い、クルリと背を向けた。
「お、帰んのか?」
ジルが片膝立ちをしたまま、まるで友達に出も言うようにジェゾに言った。
「興が醒めた」
彼はジルを尻目に見て言った。
どうやら、邪魔が入ったのが気に入らないらしい。
「おぅ。んじゃまたな」
そしてジェゾの姿は消えていった。


