「護ってくれてありがとう」


滅多に使わない、だけど綺麗にしてある正面玄関から出て、これから任務場所に行こうというときにそんな幼い声が聞こえた。


声がした方を見ると、随分前に出会って、私のことをおにーちゃんと呼んだ小さな男の子が立っていた。


「これあげる!」


彼は照れ臭そうにそう言葉を吐き捨て、私に蓮の脇差しを押しつける。


どこかで、見たことのある………いや、これは彼が持っていた物とよく似ている脇差しだ。


「これ…」


蓮の脇差しだ。


「……なんで…」


不意に込み上げてきた熱い感情を抑えながら、どうしてこれを私に渡すのかとか、どこにあったのかとか、何故もっと早く彼の手の元にいかなかったのかとか、色々聞きたかったけど、目の前の男の子がの名を呼ぶ声がした為にそれはできなかった。


「あ!しょうたろー!」


男の子は名を呼んだ青年をそう呼び、駆けていく。


「なんで大事にしてたのに渡したの?」


男の子が青年に聞く声がする。


「あれは俺が小さい頃、命を助けてくれたやつのだから」


そう言ってその青年は、空を見上げた。


空一面はシロさんが好きな白群色に染められていた。