それから季節は廻り、秋になった。


その間、私はいつもと変わらず暇さえあればシロさんの場所へ行き、剣術を教えてもらったり、産休に入ったアルと話をしたりした。


アルがお母さんになる準備をしている時、なんとなく母親ってすごいんだなぁ、と思ったりもした。


そして、彼女が産休に入ったことにより、アルが出来なくなった任務は、当然のことながら動ける人に分担されるようになった。


実際、私とジルとヨースケの三人しか動けないので、長期の任務が主になってきた。


それでもLunaと出くわすこともなければ、Lunaと戦うこともないので、大したことはない。


……筈。


そんなこんなで私が任務に行って2週間後の12月11日に帰ってくると、彼女は既に出産をしていた。


「出産おめでとう」


「あ、コウガ!」


私はシロさんの隣のベットで横になっているアルに言う。


「シロさんの病室に行くにつれて、赤ちゃんの泣き声が大きくなっていくから、まさかとは思ったけど…」


「無理言ってお願いした。こっちの方がみんな集まるだろ?」


アルがふふ、と悪戯をする子供のように笑う。


「2813gの男の子だよ」


「男の子かー。どうよ、我が子は?」


「うん。なんていうか、猿みたいな顔だな!」


あははと豪快に笑うアルは、今日テンションが高いらしい。


「自分の子供に猿って…」


隣にいたシロさんが苦笑する。


「間違いなくジルの子供だ。寝てる顔がジルのアホ面にそっくり」


「おいおい、俺を馬鹿にするのは構わねえが、ジフィアを馬鹿にすんなよ」


ケラケラ笑うアルに、我が子をあやしていたジルが頬を膨らます。


「抱くか?」


目が合ったジルは私にそう言い、有無を言わせずに彼を渡す。


「おぉ…」


意外とずっしりとした。


抱っこするだけなのに、首が座っていないので思ったより難しい。


確かに、まぁ、アルのように猿みたいだ。


に、人間って猿が進化した者らしいしね!


「ジルがね、どーしてもあたしと自分とフィーの名前入れたいって言うから」


体を起こして、アルが困ったように笑う。


「それで、ジフィア…ね」


アルの言う通り、目を閉じている顔がどことなくジル似ていた。


髪は赤毛でアル譲りだろう。


「全く、親バカが付けそうな名前だ」


彼女は嬉しそうに自分で言って、ジルを見た。