天を衝く槍



「俺らの体って、人体実験のおかげで変わってて、」


不意にシロさんが立ちあがった。


-----ザシュッ


そして徐に刀を取りだし、何をするのかと思えば、自ら自分の左足を斬りつけた。


「ジューシロー!!?」


彼の血が飛び上がり、何度も嗅いだことのある血の匂いが鼻を掠める。


困惑の色を見せながらヨースケが叫んだ。


剣先からポタポタと彼の赤黒い血が畳に落ちて染みを作る。


――なんで、自分の体を


「こんなに血が出ても痛みなんて感じない」


だけどシロさんは、何事もなかったかのように血振りをして、手入れをしながら悔しそうにそう言う。


痛くないなんて、どういうこと。


ふと気づいた。


彼の足の傷口から流れていく血がもう止まっている。


ドクドクと流れていた血がもう止まっている。


その実験のせいで、もう治っているのだろうか。


「血が止まってるだけ。完全に治ったわけじゃない」


彼は私の心を読んだようにそう言い、刀の手入れに専念し始めた。


キールの言っていたことが本当のことだとすれば、ガタが来はじめているから完全に治らず、血が止まっているだけ?


ガタが来ていなかったら、あの程度の傷はもう治っている?


それに人体実験といえども、傷の痛みを取り除く効果なんてものなんてない筈だ。


ガタがきたから、痛みがなくなりつつある?


どういうこと?


Aliceでだったら、最先端の医療技術で細胞の活性化を図ること――つまり、時間をかけずに傷を治すことは、できないことじゃない。


だけど、痛みがなくなるってどういうこと。


神経が麻痺しているとでも言いたいの?


それとも、ガタがきたから感覚がなくなっていくってこと?