シロさんのその言葉で、視線が一気にリャノの元に集まる。
「カタキくらいとらせてもいいじゃねえの?」
「………………………」
「………………………」
リャノがシロさんを睨み、短い沈黙が走る。
「おい」
ジルの低い声がそれを破った。
「ウルノを殺されたからってフィーを狙うのはお門違いってやつだぜ、リャノ」
「は?」
ジルが呆れたように言い、リャノが眉を顰める。
「知らないわけねえよな。俺らプロヴァーレの仕事」
ジルの言葉を紡いだギルの声が妙にとげとげしい。
私はゴクリと固唾を飲みこんだ。
「俺らは脱走しようとするウルノをAliceのルールに従って処罰しただけ」
ギルはウルノが死んだ日、あんなに怯えていた人とは思えないほど冷めている。
「ルールを破ったのはウルノだ」
リャノに淡々と事実を突き付ける。
だけど、それはきっとリャノも分かってるはずだ。
彼もウルノが逃げ出そうとしていたことには気づいていた。
彼がルールを破ったなんてことはリャノも百も承知だ。
「………………………」
「………………………」
そうじゃなければ、あんな辛そうな顔はしない。
きっと彼は現実を受け止めたくないだけなんだと思う。
リャノとウルノがいつもつるんでたのは私も知っている。
仲良い仲間が死んで、淡々と葬られて、いつものように変わらないように過ごしていくのが辛いんだと思う。
心の整理が、つかないんだと思う。
―—きっと
悲しみと哀しみでぐちゃぐちゃになった感情を、どうすればいいか分かんないんだと思う。
「……ざけんなよ…」
ツツーと、リャノの目から涙が零れていく。
「っざけんじゃねえッ」
「おい!」
リャノが地面を蹴って自分の剣を取りだし、ラガーが叫んだ。
それでも彼はフィーネさんの元へ行くが、その刃は届かず、何かに弾かれて地に落ちていく。
-----ガシャッ
そんな音を立てて、リャノの手から滑り落ちた彼の剣はカランカランと音を立てて地面を滑っていった。
「ぐッ」
「っ!!?」
俯せになって手を背中に回されているリャノに、まさかのギルが馬乗りになって彼の首にシロさんの剣を当てていたのだ。
彼の意外な行動に、目を瞠る。
てっきり、シロさんがやったのかと思っていた。
「一回、シローが言ったよな?」
低く言い、確かめるように聞く。
リャノが少しでも動けば、きっと彼の鮮血が飛び散るだろう。
きっとギルは本気だ。
目が怖い。
「ギル」
困ったようにフィーネさんがそう言うと、ギルは少し不満そうな顔をした。
「俺にこんなことさせんな」
辛そうに小さくそう呟いて、ギルはリャノを手刀で制したのだった。


