「……なにこれ?」


次のページを見てみたが、ありがとう、フィーと書かれているだけで、特にこの文章を解読できそうなヒントみたいなものは無い。


「これ…Punica granatumはザクロっていう実の学名ってことしか分かんなかった」


彼女が食堂のおばちゃんに聞いたと付け足し、ポケットから写真を取り出す。


一瞬、リンゴかと思った。


外はそう思うくらい赤く丸い。


だけど中はリンゴとは全く違って、小さな赤いツブツブがいくつもある。


「どういうことか、分かる?」


「いや全然」


全くわからない。


「それより、ここのフィーってフィーネさん?」


私は、ありがとう、フィーと書かれているページを指した。


「分かんない。だけど、ギルのこれに名前が書いてあったから……たぶん…」


複雑な顔をしてアルが言葉を濁す。


「あたしこれ見て、噂がほんとなんじゃないかって思った……」


彼女が俯いて、ポタリと涙をこぼす。


「………………………」


「………………………」


「……アル、」


「………………………」


「直接―—」


直接聞こう、と言おうとした時。


-----ピピッ


-----ピピッ


-----ピピッ


突然、食堂にいる全てのセルペンテの人の端末が一斉に鳴った。


「なんだろ、これ」


こんなことは初めてだというようにアルが目を真ん丸にしている。


そして画面に映し出されたのはフィーネさん。


彼はどうやら中庭にいるようだ。


彼の後ろに、だいぶ前、アルとジルが座っていた白いベンチが映っていたから。


《例の噂の話、知りたい人は今日の23時に食堂ね》


どうやらこの部隊の責任者として話すことがあるようだ。


《俺ら以外の部隊は来ない方がいい。死にたいのなら話は別だけど》


急にアングルが変わって、シロさんがそう言い、彼はさっさと通信を切ってしまった。


「…おまえ、行く?」


後ろでリャノと仲のいい人の声がする。


「行くよ、もちろん。それでウルノを殺した奴を聞く」


リャノがそう言い、立ち上がって食堂を出ていく。


何故か、そんな彼が恐ろしく怖いと思った。