その日の夕方。
私はシロさんに剣を教えてもらうために、いつものようにトレーニングルームに来ていた。
辺りを見渡してみると、確かに、真面目に手合せしているジルとギルの姿があった。
そんな彼らの近くには、浮かない顔をしているヨースケが腕を組んで二人の様子を見ていた。
「ヒヨコ」
シロさんが私を呼ぶ。
一体いつからシロさんが私のことを、そう呼ぶようになったのかは覚えてない。
気付いたらそう呼ばれていた。
…もしかして、ヒヨっ子の私がシロさんに認められてもらったら、次はニワトリって呼ばれるのだろうか。
「……………………」
……まじか。
「ごめん」
なんて考えていると、いきなりシロさんが謝った。
「え」
いきなりのことで何が何だか、分からない。
「もう剣、教えない」
「え」
彼はそれだけ言うと、まるでそれだけを言いにここに来たかのように、踵を返す。
「え、いや、ちょ、ちょ……ちょっと待ってくださいっ」
イマイチ状況が把握できていなけど、とりあえず私は理由を聞こうと、彼の袖を掴む。
すると彼は、私がそうするのを分かっていたかのように、振り返る。
「理由は、聞かないで」
何故か、心が痛くなるような声で言い、そして彼は掴んでいた私の手をそっと離した。
「あの、」
私は彼が行ってしまう前に、もう一度呼びとめる。
「……………………」
呼びとめたものの、どうしよう。
彼に聞けば、アルの悩みもなくなるかもしれない。
その原因が分かるかもしれない。
だけど、彼は聞くなと言った。
もしかしたら、このこともジルのことも関係しているかもしれない。
そう思うと、人のことをむやみに詮索出来なかった。


