天を衝く槍



ハッとして脳をフル回転させて我に返った時、母の手術はまだ終わってなかった。


時計を見ると、まだ一時間と半ほどしか経ってなかった。


そしてシトラスの香る服を見て、夢じゃなかったことに気づく。


あの女の人が私に掛けた服を改めて見ると、下ろし立てのように真っ白だった。


左胸の所に、黒いウサギの首を絞めている黄色のヘビのマークがあるだけ。


私はそれを羽織って、手術が終わるのを待った。


暫くすると赤いランプが消え、中から男の人が出てきて、私を見るけると、微笑んだ。


彼のその行為で私が問おうとしていた疑問は消え、新たな疑問が浮かんだ。


『母は何処が悪いんですか』


『肝臓だよ』


ああ、やっぱり。


どこかで思った自分がいた。


だって母はお酒をたくさん飲んでいたもの。


肝臓に負担がかかるくらい知っていた。


『何の病気ですか』


『末期の、肝硬変だよ』


末期。


なにそれ。


じゃぁ、彼女はもうすぐ死んじゃうの?


『は、母は……いつまで生きられるんですか…』


震える私の口から出た質問は、彼を困らせた。


『生活を改善しなければ、1ヶ月と半分』


私の立っている場所に突然穴が開いて、私が深く深く、落ちて行くような感覚がした。


二度目の、感覚だった。


もうこんなの、嫌なのに。


『…………………』


私は俯いて下唇を噛んだ。


涙を必死にこらえた。


母は優しい人だ。


だけど、アレコレ人に指図されるのが嫌いだ。


ましてや、束縛なんて。


『…………………』


彼がそれを言った時点で、彼女と私が一緒に過ごせる時間はハッキリとわかった。


『……わ、私はどうすればいいですか…?』