初恋*

『和泉?』

『…ぇる。』

『え?』

『…私、帰るっ!』


梶原くんのことを無視して、家に走った。


『…ただいま。』

『あら、恭華。早かったね。』

『…もういいの。』


私は黙って自分の部屋に帰った。


コンコンっ

『…恭華?入ってもいい?』

『お姉ちゃん。』

『どうしたの?そんなに元気ないなんて滅多にないじゃん?』

『……なんでもないよ。』

『さては好きな人でもできた?』


きっとお姉ちゃんは何気なく聞いたんだろう。
それが私にはカチンときた。


『…お姉ちゃんはいいよねっ…!いつもモテるし!私はっ…、私はそんなこと叶わないんだよ!いつもっ…いつもっ…、立夏にっ…』

『…立夏?立夏がなにをするの?』

『立夏はっ…いつも私の好きなひとを奪っていくっ…!』


お姉ちゃんはぐっと黙って、静かにいった。


『…それで恭華はいいの?諦めてるの?』

『それはっ…!』

『納得いかないんでしょ?それなら、踏ん張りなさいよ。奪ってやるくらいの覚悟で好きになりなさいよ。』


お姉ちゃんの瞳は今までに見たことがないくらいに力強くて。


お姉ちゃんはそのまま出ていったけど、私はしばらく動けなかった。