腕の中に、小さく纏まる高原。彼女はこんなに華奢だっただろうか。

「先生……?」

 高原の絞り出すような声。涙の色を浮かばせるその声は、俺の心を締め付ける。

「辛いなら、泣けよ。俺が、守ってやるから」

 その言葉に、嘘はなかった。教師と生徒、踏み越えてはいけない一線は、既に俺には見えていない。

 堰を切ったように声を上げて泣き始める高原。
 彼女の見せる笑顔は、強さではなかった。俺はそこに、救いを求める孤独を、確かに見たのだった。


end.