「大きい溜め息!」

 そんな言葉に息が詰まる。振り向くが早いか、声の主は言葉を続けた。

「また告白されたの? 先生も隅に置けないね!」

 そう言って快活に笑う彼女――高原佳代は、俺が副担任として持っているクラスの生徒だ。

「盗み聞きか、悪趣味だな」

「ひどーい、偶然通りかかっただけなのに!」

 わざとらしく頬を膨らませて見せる彼女。
 何が偶然だ。放課後の体育館裏に用事があるのなんて、教師に隠れて煙草を吸うような不良グループだけだろう。