脱力系彼氏

 やっぱり、あたしはダメな奴だ。泣いてばっかりだ。昇ちゃんの前で、これ以上、ブサイクになりたくないのに。涙が止まらない。嬉しくて、嬉しくて、溢れてくる。

「村口から聞いて、殴られた」

「冴子……」

病院から帰った後、昇ちゃんの所に行ってくれたのかな。やっぱりあたし、冴子には感謝しきれないよ。こんな過激で、友達思いないい奴、他にどこにもいないよ。

小さくしゃくりながら涙を擦る。

「でも……待って、昇ちゃん。まさか、病院送りにしたり、してないよね?」

「……何で?」

「だって、謝りに来るって言ってたけど、来なかったから」

また、気まずそうに視線を落とす。

「行くなって言ったから」

「昇ちゃんが……?」

涙を拭う手を止め、呆然として昇ちゃんを見つめる。まだ止まっていなかったらしい涙が、静かに頬を伝って、薄い布団を小さく濡らした。

「……」

昇ちゃんは何も言わないけれど、あたしはもう、胸が詰まって仕方が無い。涙も、止まる訳がない。

「昇ちゃん、順序、間違ってるよ……!」

昇ちゃんは素早く目を動かして、涙でひどくブサイクなあたしを見た。

「先に、会いに来てよ……」


涙が流れながらも、笑いが止まらない。

昇ちゃんは、いつだって優しさを見せてくれない。あたしの気づかないところで、こんなにも想ってくれている。


分かりにくいよ。

でも、それが嬉しくて仕方が無い。あたしの胸を、こんなにも満たしてくれる。


「……ごめん」

だけど、そんなあなたが愛しくてどうしようもない。愛せずにはいられない。



ねぇ。あたしがあなたの1番嫌うものを超えられた瞬間だって、思っていいのかな?

あたしを選んでくれたって、思ってもいいのかな?